道後通信

放生園・姫塚・湯釜薬師
運営委員 土居 敬之介

放生園の観光マップ
 道後の温泉駅前の放生園が改修され、人も車も通りやすくなった。改修に伴って観 光マップも新しいものが設置された。ところが良く見ると、「道後公園」に「湯築城跡」の表示がない。そこで松山市のホームページで市長宛のメール を受け付けているのを思い出し、「湯築城跡は全国的にも貴重な遺跡であり、県も国史跡指定申請に向けて進むと明言していること、地域の中心の城を中世及び 近世ともに残すのは松山市だけで、よそから見たら垂涎の的であり、松山市民の貴重な財産であること、それ故「道後公園」のところに『湯築城跡』の表示を是 非加えて欲しい」とのメールを送った。
 本当のところは、余り期待していなかったのだが、何と1週間も経たないうちに、『湯築城跡』の表示が入るとともに、仰せの通りであるとの返事が届いた。
 正直驚いたが、行政も徐々にではあるが変わりつつあると実感した次第。道後案内所に置いてある地図にも、今は「湯築城跡」の表示が入るようになった。こ れも湯築城の認識が徐々にひろまりつつあることの表われと喜びたい。

姫だるまが語る元寇の跡
 道後の商店街で目につくものの一つに姫 だるまがある。その起源についてはいくつかの説があるが、昔、道後地区の小学校の副読本に使われていた「わたしたちの道後」(青葉図書)にも、義 安寺の項に義安寺蛍などと共に、姫だるまに関する記述が載っている。
 それによると、「姫は河野通有のおじ河野通時の娘で、元寇(弘安の役)で討死にした父を弔うため長く義安寺に留まり、そこで亡くなった。義安寺は禅宗 (曹洞宗)なので達磨に姫の顔をかいて供養したのが姫だるまの起こりである。」と言う。
 事実、義 安寺の墓地の、プリンスホテル寄りの一番高い所に姫 塚があり、2つの墓が並んでいる。義安寺で確かめると、向かって右側が通時の墓、左側が通時の姫の墓だそうだ。通有が通時とともに2隻の小舟で元 の船を襲撃し、負傷しながら敵船に踊り込んで勇戦し、敵の大将を捕虜にした話は、昔は多くの人が知っていた。河野の後築地など通有の豪胆さは、豪胆をもっ て鳴る九州武士団を呆れさせたと言う。
 河野氏は源平の争乱の時始めて歴史の表舞台に登場し、一時期隆盛を極めたが、承久の変で没落し、通有の時代は石井郷の地頭として縦淵城を居城にしてい た。その場所は高知へ向かう33号線が小野川を渡った辺り一帯であるが、土佐街道を作る際に城山を削ってしまい、今はその辺りにビルが立ち並び、往時を偲 ばせるのは城山神社のみである。
 しかし道後には姫塚や姫だるまだけでなく、元寇に繋がるものがほかにも残っている。
 道後公園北側から入り、内堀を渡って直ぐの所に湯 釜薬師がある。日本最古の湯釜で、その頂部に「南無阿弥陀仏」の六文字が 彫られている。これは元寇で亡くなった将士の供養のため、通有が一族の一 遍上人に頼んで彫って貰ったと伝えられている。道後の湯につかる度にこれを見て、亡くなった人たちを偲んだのであろう。なお、河野氏は元寇におけ る活躍で再興の切っ掛けを掴み、次の通盛の時に通信時代の所領を回復し、伊予の守護となる。湯築城もこの通盛の時代に築かれたが、それはまだ先の話。
 さて、一遍上人誕生の地、寶 巌寺も道後公園から歩いて10分ほどの所にある。当時の寶巌寺は、今のネオン坂の下に山門があり、坂の両側に6支院ずつ、計12支院を擁する大寺 で、一遍上人が生まれたのはその支院の一つである。一遍上人は生涯寺を持たず、遊行の旅を続けたが、寶巌寺は藤沢の遊行寺、神戸の真光寺と並んで、時宗の 三大聖地となっている。昔は時宗の遊行僧が同寺には長く逗留し、連歌も盛んに行なわれたそうで、文化の一方の中心でもあったことが偲ばれる。
 寶巌寺本堂には、寺宝であり国指定重要文化財である木像一遍上人立像が安置されている。これは檀那河野通直、願主弥阿弥陀仏によって1475(文明7) 年に造立されたものである。これと比較は出来ないが、遊 行姿の一遍像が伊佐爾波神社の回廊の左奥隅(寶厳寺に一番近い所)の蛙股にも刻まれている。
 伊佐爾波神社の急な石段を降り、それに続く坂を少し降った右側の冠山に、湯 神社中 嶋神社があるが、中嶋神社の右横に七 郎明神と崇められている小さな祠がある。詳細は略すが、どうやらこれは一遍上人の父、河野通広(別府七郎左衛門)の墓のようである。
 NHKの大河ドラマ「北条時宗」は、間もなく元船が攻めて来る場面になる筈だが、弘安の役で河野通有が登場すると聞く。その通有や通時にまつわるものが 道後地区だけでも多く残っている。更に少し足を伸ばせば、程遠からぬ神社に通有の像もあるそうだ。それらを一度じっくりと探訪して見たいと思っている。

参 考
  「文化財フォーラム愛媛」   http: //www.shikoku.ne.jp/yuduki/
  「伊豫漫遊」  http://homepage2.nifty.com/doik/index.htm
    (姫だるま、姫塚、湯釜薬師、寶巌寺、義安寺、河野通有、一遍上人等)


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